フォントとは

字コードについて前項で解説しましたが、文字はコード化されてコンピュータで処理されます。ただし、そのコード化には多くの種類があり、それらが統一されていなのが現状です。

そもそも、文字コードというのは英語圏のユーザー以外が主となって利用するため、ややもすると脇に置かれがちな問題かもしれません。しかし、文字を数値化してコンピュータが処理するための「文字コード」というのはなくてはならない存在です。

さて、このように文字に関して文字をコード化するというのは、コンピュータが処理する上で必要不可欠ですが、もう一つ文字に関して大切な役割を担う存在があります。それは、

文字の形を表現する

ということです。つまり、「書体」を表現するということで、文字のディスプレイ表示や印刷に際し、どのような形で表現するかということもとても大切なことで、この文字の書体のことを、

フォント

と言います。具体的なフォントには「明朝体」「ゴシック体」「楷書体」「行書体」などがあります。Wordで文書やポスターなどを作成する場合は、このフォントを使い分けることでより見栄えの良い文書を作成することができます。

以下は、色々なフォントのイメージです。

フォントの種類のイメージ

フォントの種類は大変多く、それらをすべて使い分けるのは困難ですが、自分の好みのフォントを探すのも楽しいものです。

新しいフォントを使う時には、「コントロールパネル」→「フォント」から、フォントフォルダに新しいフォントファイルをインストールするとフォントを追加することができます。

ただし、フォントファイルのサイズは3~5MB程度と結構大きいので、ハードディスクの容量が少ない場合は注意が必要です。(逆に言えば、いらないフォントをアンインストールすることでディスク容量を増やすことができます)

さて、無数にあるフォントも、その性質によっていくつかに分類することができます。まず、フォントの表現の仕方、「形状」で区別すると、

ビットマップフォントとアウトラインフォント

の2つに大別することができます。ビットマップフォントは、文字の形を

点(ドット)の集合で表現するフォント

になります。したがって、ドットフォントとも呼ばれます。単純な仕組みのためコンピュータが登場した初期から使われているフォント形式です。

デジタル時計のように数字や文字の形状をドットの有無で表わし、2進数の0と1に対応させています。例えば、ドットの有無(白と黒)をそれぞれ0と1に対応させ、下図のように表わします。

ビットマップフォントのイメージ

1ドットを1ビットとしてメモリに記憶させるため、フォントを構成するドットが多くなるほどメモリ容量も増えます。

ただし、フォントを構成するドットの数が多いほどなめらかできれいな形状になります。パソコンのディスプレイでは16×16ドット、 印刷には24×24ドットが一般的です。

ドットとビットが1対1で対応しているので、CPUの負担が少なく高速に表示できるというメリットがある半面、文字を構成するドットの数が決まっているため、文字を拡大するとドット自体のサイズも大きくなり、階段状のギザギザ(ジャギーという)が目立つようになるというデメリットがあります。

対してアウトラインフォントは、文字の形を、

輪郭線(アウトライン)で表現するフォント

になります。アウトラインフォントは、ドットを塗りつぶして表現するのではなく、基準となる点からフォントの線の輪郭を計算して描き出します。

つまり、フォントのサイズに応じて計算しなおされて出力されるため、文字を拡大縮小してもジャギーが目立たず、なめらかな曲線が表現できるというメリットがあります。このため現在では、アウトラインフォントが主流となっています。

ただし、かなり小さい文字を表現する場合には、アウトラインフォントでは輪郭線がぼやけるので、ビットマップフォントの方がきれいに表現できる場合が多いです。

双方の特徴をまとめると、ビットマップフォントはメモリやCPUへの負荷が少ない反面ジャギーが目立つ、アウトラインフォントは計算を必要とするため、メモリやCPUへの負荷がかかる反面ジャギーが目立たないということになります。

しかし、それはあくまで一般論であり、小さいサイズのフォントの場合はビットマップフォントの方がきれいに表示されたり、大きいサイズのフォントでも、ドットの数を多くすればビットマップフォントの方がきれいで、高負荷な場合もあります。

次に、フォントの「幅」で区別すると、

等幅フォントとプロポーショナルフォント

に区分することができます。

等幅フォントは文字通り、全ての文字を同じ幅で表現するフォントで、例えば「i」と「w」という文字が同じ横幅で表現されるフォントになります。

等幅フォントには、「MS明朝」「MSゴシック」「Courier New」「Terminal」などがあります。

対して、プロポーショナルフォントは、文字ごとに最適な幅が設定されるフォントです。例えば「i」と「w」という文字の幅は一定ではなく、文字の高さや形にあわせて最適な幅が指定されます。

プロポーショナルフォントには、「MS P明朝」「MS Pゴシック」「Century」「Arial」「Times New Roman」などがあります。「P」は「Proportional Font」のPです。

当サイトで使用している「メイリオ」フォントは、等幅フォントもプロポーショナルフォントも持ち合わせた混合的なフォントになります。(和文字が等幅、英文字がプロポーショナルで、全体としてはプロポーショナルフォントに分類される)

メイリオは、Windows Vistaから標準搭載されたフォントで、「ClearTypeフォント」と呼ばれています。詳しくは後述します。

現在では、基本的にプロポーショナルフォントが主流になっています。日本語等の2バイトフォントでは等幅フォントもよく利用されますが、英文においてはプロポーショナルフォントが主流です。

ただ、いずれにしてもアウトラインフォントであり、アウトラインフォントにおける区分になるわけです。そのため、ビットマップフォントよりも美しく表現できるアウトラインフォントをさらに美しく表現するための工夫がなされてきました。

そもそも、アウトラインフォントであっても結局はディスプレイ上のドットによって表現されるため、必ずジャギーは発生してしまうのです。

そこで、階段状のドットの境界線に、背景色との中間色を配置してジャギーを目立たなくする方法が用いられてきました。この方法を、

アンチエイリアス(アンチエイリアシング)

と言います。ジャギーのうち、画面上に出るジャギーはエイリアシングとも呼ばれ、エイリアスをアンチ(非)で「アンチエイリアシング」となります。

一般的には、アウトラインフォントではアンチエイリアスを有効にしておくとより滑らかで美しいフォントが表現でき、逆にビットマップフォントでは、アンチエイリアスを有効にするとラインがぼやけて見にくくなります。

そして、新たなフォント表示技術としてWindows XP以降に新たなアンチエイリアシング技術が搭載されました。そのアンチエイリアシング方法を、

ClearType(クリアタイプ)

と言います。先ほどの「メイリオ」フォントは、このClearTypeが使われています。

ClearTypeは、これまでのアンチエイリアスのように中間色を配置するのではなく、ディスプレイの「赤(R)」「緑(G)」「青(B)」のサブピクセル(液晶ディスプレイの画素を構成する3色の細かいドット)を使って色調を微妙に変化させ、さらに細かいアンチエイリアシングを行う技術です。詳しい説明は割愛しますので、さらに詳しくは下記の 参考サイト を参照してください。

こうしたアンチエイリアシングによって、アウトラインフォントがさらになめらかな曲線を表現できるようになり、今後さらに美しいフォントが誕生して行くことでしょう。

では次に、ファイル形式(符号化方式)における分類です。下記以外にもいくつかの分類がありますが、ここでは代表的なものについて解説します。

TrueTypeフォント(トゥルータイプフォント)

TrueTypeフォントは、Apple社が開発してMicrosoft社に技術供与したフォントで、WindowsとMacintosh共通で利用できるアウトラインフォントです。(ビットマップフォントを内蔵したものもあります)

最もメジャーなフォント形式で、それぞれのOSに標準搭載されています。

フォントアイコン(「コントロールパネル」→「フォント」)では、下図のとおり「TT」と表されます。他のフォント形式は後述しますが、「O」がOpenTypeフォント、「A」がビットマップフォントで、主にWindowsのシステムフォントになります。

緑色の「TT」は、「TrueType Collection」と言い、類似するTrueTypeフォントが一つのファイルにまとめられたもので、例えば「MS明朝とMSP明朝」が一つにまとめられ、等幅フォントとプロポーショナルフォントを使い分けるが出来るフォントファイルです。青色の「TT」は、単なるTrueTypeフォントになります。

フォントアイコンのイメージ

PostScriptフォント(ポストスクリプトフォント)

PostScriptフォントは、Adobe Systems社が開発したアウトラインフォントで、主に印刷用のフォント形式になります。TrueTypeフォントの登場までは、スタンダードだったフォント形式です。

OpenTypeフォント(オープンタイプフォント)

OpenTypeフォントは、Adobe Systems社とMicrosoft社が共同開発したアウトラインフォントで、Adobe社のPostScriptフォントとApple社のTrueTypeフォントを結合した、TrueTypeの次世代フォント形式です。

OS等の環境の違いに対応できるフォントを目指して開発されたため、マルチプラットフォーム環境においてOS等の違いを問わず、同様に出力させることができます。

これらが、主なフォントの分類になります。まだ他にも様々な分類やフォント形式が存在しますが、これだけおさえておけば十分だと思います。

このように、フォントには多くの種類や分類があります。注意が必要なのは、

フォントAがインストールされていないパソコンでは、フォントAを表示することができない

ということです。例えば、自分のパソコンでお気に入りのフォントAを駆使して作成した文書を、他人のパソコンで開いてみたら、そのフォントAで表示されないでフォントBで表示されるということがあります。

なぜなら、そのパソコンにフォントAがインストールされていないからです。フォントAで表示するためには、フォントAもそのパソコンにインストールすることが必要になります。

フォントファイルは数MBもあるので、持ち運んでインストールするのが困難な場合は、文書ファイルをPDF化するという方法もあります。

最後に、フォントの大きさは「ポイント」という単位で表します。1ポイントは約0.35ミリです。

更新履歴

2009年10月15日
ページを公開。
2009年10月15日
ページをXHTML1.0とCSS2.1で、Web標準化。レイアウト変更。
2014年5月23日
内容修正。
2018年2月5日
ページをSSL化によりHTTPSに対応。

参考文献・ウェブサイト

当ページの作成にあたり、以下の文献およびウェブサイトを参考にさせていただきました。

アウトラインフォントとドットフォント
http://www.infonet.co.jp/ueyama/ip/hardware/font.html
Windows XPの正体:文字表示を滑らかにする新技術「ClearType」
http://www.atmarkit.co.jp/fpc/xp_feature/cleartype/cleartype.html