ビジネスメールを送る(6)~ メールを返信する ~
電子メールの便利さは、やり取りが非常に簡単で早いこと、極論すると返信が簡単にできることといっていいと思います。ボタンひとつで返事を返すことができ、郵便の手間とは比べものになりません。
しかし、ことビジネスの世界になると、その便利さによって生まれるトラブルも生じてきます。本項では、その便利な「返信」に潜むトラブルとマナーについて学習して行きたいと思います。
もっとも、現在では一般的なメールサービスよりLINEなどのサービスの方が便利になってきていますが、ビジネスの世界では、まだまだ従来のメーラーを使ったメールが主流です。
なぜなら、これまで学習してきたとおり、ビジネスでは「相手に合せる」という姿勢が大切になるからです。
つまり、取り引き相手がどんな環境でメールを利用しているかわからないため、一般的に広く使われている手段でやり取りを行うということです。
旧態依然としたマナーが存在しているのも、便利さよりも、相手のことや全体のことを考えるという一人ひとりの意識を重要視しているわけです。
したがって、
メールの「返信」や「転送」にもマナーが存在する
というのはもうすでにおわかりでしょう。
操作自体はボタンひとつでできる簡単なものですが、じつは返信におけるマナーや注意点は意外に多くあり、奥が深いのです。
そもそも、返信というのは届いたメールを差出人に送り返すという簡単なことですが、大きく分けて2つに分類することができます。
単純に、1人に返信するのか、複数人に返信するのかということです。
言い換えると、そのメールが自分1人に届いたのか、それとも自分を含めた複数人に届いているのかによって、返信するときの注意点は変わってきます。
特に複数人がそのメールを受信している場合は要注意です。
例えば、行事などの出席確認メールに返信する場合を考えてみましょう。この場合は、複数人が同じメールを受信しているはずです。
しかし、
返信しなければいけないのは差出人のみ
であるはずです。
つまり、全員にその行事の出欠連絡(私は出席できませんなど)を返信する必要はありません。何十人もの人がそのメールを受信していたとすると、それぞれから「出席します・しません」などのメールがいちいち届いたら大変煩わしいものです。
これが最初の重要なマナーです。宛先とCCとBCC で学習のとおり、
届いたメールが同報メールの場合(TO・CC・BCCの種類を問わず)は全員に返信しない
のがマナーです。
もちろん、これはメールの内容によりけりですが、基本的には差出人だけに返信するのがマナーです。
ただ、そんなことは注意すれば問題ないと思われるかもしれません。
しかし、
メールは簡単に受診者全員に返信できてしまう
のです。
似たような操作で簡単に全員に返信できてしまうので、1人に返信したと思った個人的な内容のメールが、全員に届いていたというのはよくあるトラブルです。
メールに返信するときには、必ずこのことを確認するようにしましょう。(詳しくは後述します)
では、まず「1人」に返信する方法からです。
例として、自分(空条承太郎)宛てに送信者(吉良吉影)からメールが来たとして、これに返信する場合をみてみましょう。
返信するには、そのメールを選択した状態で、「ホーム」タブの「返信」ボタンをクリックします。
または、メール上で右クリックより、「返信」を選択します。
ここでもうおわかりだと思いますが、「ホーム」タブの場合も、右クリックメニューの場合も、「全員に返信」という項目があります。つまり、これ選択すると全員に返信できることになります。
さて、「返信」を選択すると、まず受信トレイのメールに赤字で「下書き」の表示がされます。
また、プレビュー欄には「宛先」と「件名」そして「Original Massage」という「本文」がすでに書き込まれたメールの作成画面となっています。これが下書きの状態になります。
本文中の「Original Message」というのは、送信者(吉良吉影)のメール情報になります。送信者が送信したメールの件名や日時、本文などが引用文としてそのまま書き込まれています。
この「下書き」の状態は、まだどこにも保存されていない状態です。
そのため、他のメールやフォルダを選択すると、下書きは解除となり保存されずに破棄されます。もしくは、プレビュー画面の「破棄」をクリックすると破棄されます。
あまり必要性ないと思いますが、下書きを保存したい場合は、左上のメニューバーから「名前を付けて保存」すると「下書き」フォルダーに保存されます。
また、独立した画面で作成したい場合は、メールをダブルクリックするか、上図のプレビュー画面の「ポップアウト」をクリックすると、別ウィンドウで作成することができます。
別ウィンドウで立ち上げた場合は、他のメールやフォルダを選択しても破棄されることはありません。このあたりは、利用していくうちに自然と身についていきます。
では、まず「宛先」からです。
送信者(吉良吉影)へ返信するわけですから、送信者(吉良吉影)の宛先が「TO」へ記述されています。
なので、通常ここを変更する必要はありません。ただし、特段の配慮を必要とする相手(重要なお得意様など)に送る場合にはこの宛先の記述を変更することもあります。
詳しくは、アドレス帳に登録する で後述しますが、アドレス帳から宛名を選び直すことで相手の「敬称」を表示させることができます。
メールに返信した場合は、相手の登録名(吉良吉影が自身で登録しているユーザ名)がそのまま返信されます。通常、この登録名は「自分の名前」であるため、敬称はありません。
例えば、「吉良吉影」から来たメールに返信した場合、下図のように「吉良吉影」という登録名がそのまま「呼び捨て」で返信されていきます。
つまり、「吉良吉影」からすれば、自分の登録名がそのまま帰ってきたに過ぎないわけですが、この部分をアドレス帳から選択しなおして、アドレス帳に登録してある「吉良吉影様」などの敬称付きの宛名で届けるという配慮もポイントになります。詳しくは、アドレス帳に登録する で別途学習します。
そして「差出人」の欄には、自分(空条承太郎)が設定されています。ここも変更する必要はありません。
次に「件名」ですが、ここには来たメールのタイトルの先頭に「RE:」が付けられた件名が記述されます。
この「RE」の意味は、ラテン語の「○○について、○○の件」という意味とされ、「Reply(リプライ:返信)」や「Response(レスポンス:反応)」という説がありますが、いずれにしても「返信」を意味します。
したがって、相手(吉良吉影)からすれば、下図のように自分が送ったメールに「RE:」が付加されたタイトルのメールを受信することになります。
これはいろいろなケースがあって判断が難しいところですが、
原則としてタイトルはそのままで送る(「RE:」を消さない)
のがマナー、とまではいいませんが一般的なやり方です。
なぜなら、相手からすると、どのメールに対する返信なのかすぐに判断できるからです。
ただし、一部のメーラーでは、返信メールにさらに返信すると「RE:」がさらに追加されていきます。これは多くの方が携帯メールで経験していることと思います。
つまり、返信に返信を重ねると「RE:」がその分だけ増えていくメーラーも存在するのです。(Outlookでは増えていきません)
そういった場合には、
「RE:」を消して2つ以上にならないようにする
ようにしましょう。
タイトルが「RE:」ばかりになって、肝心のタイトルの内容が表示されなくなるほどに増えることもあります。
例えば、「RE:」が増えていった場合、「RE:このメールに返信してください。(7)」などのようにまとめる方法もあります。これはすっきりするうえに気配りもうかがえ、ワンランク上の方法といえます。(こうした方法は相手もやり取りに慣れていて意味が伝わることが前提となります)
したがって、どのメールに対する返信かわかるように「RE:」は残しておく、増えてくると消すかまとめるのが返信メールの基本的な「件名」のつけ方になります。
ただし、中には「RE:」で返信するのは失礼と感じる人もいるようです。
自分の書いた件名がそのまま返ってくるので、手を抜いているような軽んじられているような、そんな感じを抱く人がいないわけではありません。(ひと昔前まではそう思う人が少なくありませんでした)
そういった可能性がある相手や、宛先と同様に特段に配慮が必要な相手に送る場合には、件名の記述を変更することがあります。
これもはなかなか正解を求めるのは難しいところですが、件名を変える場合には、どのメールに対する返信なのかわかるようにすることが必須です。
例えば「RE:このメールに返信してください。(ご返信のメールです)」のように、補足をつけて返信するというのもひとつの手になります。
次に、内容についてです。
内容の欄には、先述のとおり「Original Message」に送信者メールの詳細がすでに記述されています。
これは「誰が」「いつ」「どこへ」「どんな」メールを送ったのかという詳細と本文です。つまり、受け取った相手のメールそのものです。
この「Original Message」以下の部分は「引用」と言われます。
メーラーの種類によって記述されない部分(例えば「From」や「Sent」など)があったり、「Original Message」の表示についても「送信者の名前 wrote:」だったり、無かったりしますが、メーラーに特別に設定しないかぎりデフォルト(初期設定)で書き込まれるようになっています。
引用部分も消すかどうかは場合によりけりですが、
基本的には残したまま返信する(全文引用する)
のが現在の主流になっています。
なぜなら、これも本文をそのまま残しておくことで、これまでのやり取りの経過がよくわかるからです。
こちらもなかなか一律に正解を求めることはできませんが、返信する内容が引用の内容と関係があるなら残しておき、あまり関係がないのなら消すといった判断でよいと思います。
ただし、
引用に手を加えて一部分を削除したり編集するのは失礼になる
ので、残すなら全文残す、消すなら全文消すようにしましょう。
また、件名の「RE:」とは異なり、Outlookでは「Original Message」が返信するたびにどんどん増えていくので、2つ以上の全文引用をすると、引用文だけで恐ろしく長いメールになります。
直近の1つの引用文のみか、もしくはもっとも必要な引用文のみ残し、それ以前のものはすべて削除すればよいでしょう。
引用の取り扱いについては、必要ないという人もいれば必要だという人もいて、「件名」以上にマナーや感じ方があいまいです。
その理由は、下図のように以前のメーラーではたいてい引用符という記号「>」が行頭に付加されるようになっており、部分的に引用するマナーが定着していたためだと思われます。
上図のように全文引用ではなく、引用文の一部を使用して、下図のように、引用に対して回答するような返信が主流だったのです。見たことがある方も多いと思います。
これは、全文引用のようにメールが長くなることはなく、相手の質問等に的確に答えることができるため、広く使われてきた手法です。(個人的には好きではありませんが)
しかし、
近年のメーラーではデフォルトで引用符が付かなくなった
ため、引用符を付けようと思うと、オプション設定から設定することは可能です(設定の方法は基本操作編では割愛します)が、デフォルトのままでは手入力で打ち込むしかありません。
このために、従来より広く使われていた手法が次第に使われなくなったのだと思われます。
したがって、現在では引用の使い方については、まず第一に相手のことを考え、最適な使い方をその都度選択するしかありません。
次に、本文です。
本文はこの引用の上に記述します。
引用の下に記述すると、相手がスクロールしなければならなくなったり、また引用符がないため、本文と混同する可能性があるからです。(署名だけは引用の下に挿入する場合もあります)
送信すると、下図のように「返信」を示す左矢印のマークが表示されます。
件名には「RE」が付いており、引用符のない全文引用で返信されます。
次は、「複数人」に返信する場合です。
すでに操作方法はおわかりのことと思いますが、差出人1人へ返信する場合とほぼ同じです。「ホーム」タブの「全員に返信」もしくは右クリックメニューの「全員に返信」から行います。
例によって、自分を「空条承太郎」として、下図のように「TO」で他2名にも送られているメールに返信する場合を考えてみましょう。「全員に返信」を選択するとどうなるでしょうか?
この場合は、全員(差出人:吉良吉影、TO:半沢直樹次長、TO:島耕作課長の3人)がTOに書き込まれます。
件名や引用についての考え方は、全員に返信する場合においても同じです。
ただ、全員に返信する場合に考えなければならないことは、
本当に全員に返信する必要があるのかをよく考える
ということです。
その返信メールを全員に見せる必要がある場合だけ、つまり、全員で共有しなければならない情報のみを全員に返信するようにしましょう。
このように簡単に「自分以外」の全員へ返信することができます。操作自体はなんでもありません。しかし、もっとも理解しておかなければならないのは操作ではなく「仕組み」を理解しておくことです。
複数人へ返信する場合で、トラブルになる可能性が非常に高い例があります。
それは、
CCとBCCで届いたメールに返信する場合
です。
これは、よく理解していないと本当に重大なトラブルに発展する可能性があるので、理解に不安がある方は、宛先とCCとBCC でもう一度学習しておいてください。
では、CCでメールが届いた場合から考えてみましょう。
例によって自分を「空条承太郎」だと思ってください。まず、「吉良吉影」から、TOで「空条承太郎」、CCで「半沢直樹次長」と「島耕作課長」に届いたメールの場合です。
このメールに「全員に返信」すると、差出人である「吉良吉影」がTOへ、CCの「半沢直樹次長」と「島耕作課長」はそのままCCに記述されます。
これは問題ありません。
TOで送った「空条承太郎」が全員に返信したとしても、これはたいして問題となることはありません。基本的にTOの相手は取り引き相手であり身内ではないからです。
問題となるのは、
CCでメールを受け取った人が全員に返信する場合
になります。
つまり、「半沢直樹次長」と「島耕作課長」が全員に返信する場合です。
なぜなら、宛先とCCとBCC で学習のとおり、CCでメールが届くということは、基本的に「あなたにも送っておきます」的な意味合いのついでのメールであり、彼らは「部外者」だからです。
そのついでの受信者「島耕作課長」が全員に返信すると、下図のとおり、メインの相手「空条承太郎」へメールが返信されることになります。
この場合、メインの相手「空条承太郎」の心境はどうでしょうか。やり取りを行っているのは「吉良吉影」です。部外者からメールが来たとなると、横やりが入ったと思うでしょう。
このように、よくあるトラブルは、差出人(この場合は「吉良吉影」)にだけ送るつもりが全員に送ってしまったというトラブルです。
その内容が、もし「空条承太郎は金を出したくないだけだ」とか「空条承太郎はこういう人間だ」というような内容だったら、取り返しのつかないことになります。
ということは、さらに問題となる場合があります。
それはもちろん、
BCCでメールを受け取った人が全員に返信する場合
です。
これは、注意する以前に、BCCで受信していることに気づかない場合があります。
例えば、下図のように、送信者を「吉良吉影」とし、TOで「空条承太郎」、BCCで「半沢直樹次長」に送る場合を考えてみましょう。
この場合は、「空条承太郎」側でも「半沢直樹次長」側でも、宛先には「空条承太郎」のみが表示されることになります。
このとき、「空条承太郎」は自分以外にメールが送られていることを知り得ませんが、「半沢直樹次長」はこの宛先を見て、メールがBCCで送られていることに気づかなければなりません。
ここがBCCの恐ろしいところです。気づかないとあくまで「自分宛てのメール」だと思い込んでしまうのです。
では、これに返信してみましょう。
通常の返信であれば、どちらも「吉良吉影」がTOに記述されますが、ここで「全員に返信」を選択すると、両者で違いがでてきます。
下図は「空条承太郎」が「全員に返信」を選択した場合です。
BCCで送られた「半沢直樹次長」はどこにもでてきません。つまり、ここでも「空条承太郎」は自分以外にメールが送られていることを知り得ません。
では、「半沢直樹次長」が「全員に返信」を選択するとどうなるでしょうか?
上図のように、「吉良吉影」のほかに「空条承太郎」がTOに記述されます。「半沢直樹次長」はここでも自分以外にメールが送られていることに気づくことができます。
したがって、このことは2つの重要事項を示しています。
まず1つは、
BCCで受け取った人には誰の返信も届かない
ということです。
この場合、「空条承太郎」はどうやっても「半沢直樹次長」へ返信メールを届けることはできません。つまり、BCCに入れた送信相手は、他の誰かが「全員に返信」をしてもその返信が届くことはないのです。
そして2つ目の重要なことは、
BCCで受け取った人が全員へ返信すると、TOの人は知らない相手から突然返信がくる
ということです。
CCの場合では、「空条承太郎」は「半沢直樹次長」に送っていることを知り得ますが、BCCの場合はまったく知り得ません。
そこへ「半沢直樹次長」から突然メールが返信されてくることになります。とても気持ちのいいものではなく、陰でこっそりメールを送っていることがわかり、大変心証を悪くするでしょう。
このことは十分理解しておかなければなりません。
では、すべての宛先をBCCに入れて送った場合はどうなるでしょうか?
この場合は、下図のように全員が宛先に「差出人の名称」が記述されているメールを受け取ります。
このメールに「全員に返信」します。すると、そのまま宛先に差出人「吉良吉影」が記述されます。
この場合は、たいして問題になることはありません。
必ず注意しなければならないのは、内緒で送った相手が秘密をバラしてしまうことです。
こっそりメールを他人に送っていた背信的行為がバレるうえに、その内容が先ほどのCCの例のようなものだったら、もうおしまいというほどのトラブルです。
少々難解ですが、このCCとBCCの仕組みを理解しておくことは、ビジネスメールを使いこなすうえで必須といってよいほど大切です。マナーも「信用」にかかわるところですので、しっかり身につけておきましょう。
更新履歴
- 2014年7月9日
- ページを公開。
- 2018年1月10日
- ページをSSL化によりHTTPSに対応。
- 2020年5月21日
- メールソフトをWindows LiveメールからOutlookに変更。
参考文献・ウェブサイト
当ページの作成にあたり、以下の文献およびウェブサイトを参考にさせていただきました。
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