パケットとルーティング|データ伝送の仕組み
- 著者:YAMANJO
- 公開日:2008年7月27日
- 最終更新日:2025年4月4日
インターネットでは、どのようにデータが伝送されていくのでしょうか?データ伝送の仕組みを理解しておきましょう。
データ伝送とは
インターネットという基盤では、WWW以外にも様々なサービスが利用できることを学習してきました。ウェブページを閲覧するだけでなく、電子メールを送ったり、音楽や動画などのファイルをダウンロードすることができます。
これは、インターネットという巨大なネットワークを利用することによって、自分のパソコンが世界中のコンピュータ等と物理的に「繋がる」ことを意味しています。繋がっているからこそ様々なサービスが利用できるわけです。
もう少し詳しく言うと、インターネットを利用して何かを行うということは、データ伝送を行っていることになります。
データ伝送とは、
通信回線(ネットワーク)を使ってデータを送受信すること
です。
そのままの意味ですが、インターネットでは、あらゆる場面でデータ伝送をともなっています。例えば、WWWシステムでハイパーテキスト(ウェブページ)を閲覧するためには、WWWサーバからハイパーテキストのデータを自分のパソコンに伝送してもらう必要があり、電子メールであれば、当然データが伝送されて相手に届きます。
また前項で学習のとおり、ファイル転送のFTPをはじめ、遠隔操作のTelnetといった要素は、もともとデータ伝送のためにネットワーク化したことが始まりになっています。
では、データ伝送がどのように行われているのかというと、Amazonの宅配のようにすべての商品が箱に収められて一度に届くわけではありません。言い換えると、「ファイル」というまとまりを単位として伝送されるのではなく、もっと小さい単位に分解されて伝送されていくのです。(ファイルについては、ファイルとは を参照してください)
宅配便の箱が「ファイル」で、中身の商品が「データ」です。箱(ファイル)で届くのではなく、商品(データ)が個別に届いて最終的に箱(ファイル)に再構成されるイメージです。そのため、ファイル伝送ではなくデータ伝送という言い方をしています。
また、伝送ではなく「転送」という呼び方もあります。前項のFTPは「転送」でした。技術的な場面では区別される用語ですが、一般的には、伝送と転送の意味の違いはほとんどありません。どちらも同じ意味で使われています。
ネットワークを介してデータを送ることを「伝送」と言い、通信の意味が強い呼び方です。一方、ネットワークを介さないデータ移動や保存(例えばUSBメモリへのコピーやフォルダ間の移動など)も含めて、データの移動一般が「転送」と呼ばれます。
したがって、本来は転送の方が伝送よりも広義の意味で使われます。
回線交換方式とパケット交換方式
ネットワーク上でデータを送受信する方法(方式)はいくつかありますが、基礎として理解しておくべき方式は2つです。
まず1つは、
回線交換方式
と呼ばれる伝送方式です。
回線交換方式は電話と同じようなもので、通信相手を特定して1対1の通信を行います。
まず、通信を開始する前に送受信者の間で専用の通信回線を確立します。そして、その回線を通信が終了するまで占有して使い続ける方式になります。
専用の通信回線を確立するというのは、通信経路をひとつ決めて、その経路を占有するという意味です。そのため、送るデータには送信先に関する情報を持たせる必要がなく、送受信がシンプルになります。
回線交換方式は、インターネットの初期にダイヤルアップ接続で使われていました。ダイヤルアップ接続は、電話回線を使用してプロバイダに電話をかけ、プロバイダとの通信経路を確立してから通信を行う方法です。この場合、通信が終わるまで電話回線を占有するため、インターネット利用中は電話が使えませんでした。
このように、回線交換方式は通信経路を占有してしまうため、他のユーザーが同じ回線を利用できないという大きなデメリットがあります。そのため、同時にたくさんのユーザーが接続するインターネットのような大規模ネットワークには不向きです。
ただし、ダイヤルアップ接続のように、一般的には家庭とプロバイダ間の回線の占有であり、家庭内での弊害はあるものの、他のインターネットユーザーの通信を遮断してしまうというようなことはありません。(他のユーザーは物理的に異なる回線を使用しているため)
ダイヤルアップ接続以外の利用例としては、企業間の通信やデータセンターとの接続を専用線で行う場合などに利用されます。常に確保された回線として占有することで、高いセキュリティを確保することができます。
とは言え、現在ではほとんど回線交換方式は利用されていません。
もう1つは、
パケット交換方式
と呼ばれるデータ伝送方式です。
スマートフォンの普及によって「パケット」という用語は、もはやなじみ深いと思いますが、「小包」の意味で、データの単位を表します。
先述のとおり、ファイルというまとまりを分割したデータ伝送の最小単位になります。つまり、ファイルはパケットという単位に分割されて伝送されていくことになります。
ただし、パケットのサイズは一律ではなく、ネットワーク環境やプロトコルによって異なります。例えば、イーサネットでは通常、最大転送単位が約1500バイトに設定されていますが、Wi-Fiやモバイル通信などでは異なる場合もあります。(イーサネットについては、LAN・WANとは を参照してください)
パケット化する最大の目的は、回線交換方式のデメリットである「占有」を解消することです。
なぜ、パケット化によって占有が解消されるのかというと、
各パケットを必ずしも同じ経路で伝送する必要がない
からです。
パケットがそれぞれ自由な通信経路を選択して通信するので、回線を占有しないということです。現在のインターネットは、このパケット交換方式による通信が主流となっています。
パケットの仕組み
パケット交換方式では、パケットがそれぞれ経路を選択できるため、すべて同じ経路で伝送されない場合があります。例えば、蜘蛛の巣のようなインターネットで、パケットが別々の経路を通り、最終的に宛先に集まっていくイメージです。
なぜ、このような通信が可能なのかというと、
パケットに送信先や送信元の情報などが付加されている
からです。
回線交換方式では送信先の情報を付加する必要がありませんでしたが、逆にパケット交換方式では、送信先情報がなければ送り届けることができません。
この情報のことを、
ヘッダ情報
と言います。
パケットには必ずヘッダ情報が記述されており、ヘッダ情報に従ってパケットはそれぞれ経路が異なっても同じ目的地に到着することができるようになっています。
ヘッダ情報はパケットの先頭部分に記述されています。その先頭部分の意味で「ヘッダ(header)」です。
具体的なヘッダの中身は、送信元のアドレス、送信先のアドレス、パケット番号、データ長(データ部分の長さ)、TTL(Time to Live)などになります。
アドレスとはインターネット上の住所にあたるIPアドレスと呼ばれる数値のことで、詳しくは次項から順を追って学習していきます。パケット番号とは各パケットに振られた番号で、受信者側で正しい順序で組立るためのものになります。
データ長とは、パケットのデータ部分の長さのことで、受信者側にパケット内のどこまでがデータで、どこまでがヘッダかを区別してもらうための情報になります。このヘッダ部分以外のデータ部分のことを「ペイロード」と言います。パケットはヘッダとペイロードで構成されています。
例えば、ペイロードにはテキストや画像などのデータ部分が入っていますが、なぜ拡張子が必要か? で学習のとおり、実際のデータは2進数の羅列であり、アプリケーションソフトによってバイナリの解釈が異なるため、受信者側ではどこからどこまでがペイロードなのかを判断することができません。そのため、例えば「500バイト」といったデータ長を記載し、受信者側はデータ長を見て、パケットからペイロードを取り出して処理します。
TTLは「Time to Live」の略で、そのパケットの生存時間を意味します。TTLの値はパケットの送信時に設定され、ルータなどのネットワーク機器を通過するたびにその値が1ずつ減少します。そして値が0になるとパケットが破棄されます。これは、パケットが届かない場合に永遠にネットワーク上に残るのを防ぐためです。
このように、ヘッダ情報によって経路途中の一部に障害があって伝送できない場合でも、他のルートを通って届けたり、パケットの到着順序が違っていても、正しい順序で組み立てられるといった柔軟な伝送が可能になります。
またパケットに分割して送信することで、回線を占有することなく、多数のユーザーが同時にデータを送受信できるようになります。経路が選択可能であるということは、ネットワークの規模が大きくなるほど効果を発揮することになり、インターネットには不可欠な仕組みとなっています。
下図は、パケットの使用量を表示したウィンドウです。(Windows11では「Windowsの設定」→「ネットワークとインターネット」から過去30日間の使用状況を確認することができます)

ルータの役割
では、パケットが経路の選択をどのように行っているのかというと、当然ながらパケットが意思を持つことはないので、パケット自身が行っているわけではありません。
送信されたパケットは、インターネット上の様々な機器を経て目的地に届けれらます。ヘッダ情報をもとに、これらのネットワーク機器が最適な経路を選択して転送しているのです。
インターネットを高速道路網に例えると、車がパケットで、インターチェンジやジャンクションがネットワーク機器になります。異なる道路の接続点にあるジャンクションで最適なルートを選択して進んでいくように、LANやWANの接続点にあるネットワーク機器がパケットのヘッダ情報を見て、次のネットワークへ送り出していきます。
LAN・WANとインターネットの違い で学習のとおり、インターネットはWANの集合体でもあり、さまざまなネットワークの集合体です。そのため、ネットワークの接続点ごとにこうした機器が存在します。リレー方式でパケットが転送されて目的地に届くということです。
このネットワーク機器のことを、
ルータ
と言います。
Wi-Fiルータなどでお馴染みですが、家庭用のルータも同じ役割を担っています。
パケットはこれらのルータによって最適な経路を選択されて送り出されているのです。ヘッダ情報をもとに通信経路を選択してデータを送り出すことを「ルーティング」と言います。
ルータは、ネットワークとネットワークの中継地点(接続点)に存在します。
つまり、
ネットワークとネットワークをルータが中継している
ということです。
ルータを家庭や会社等で使用している方は、一度確認してみてください。インターネットとの境界、つまりインターネットに接続する直前(回線終端装置の次など)に、ルータが接続されているばずです。(一体型の複合的な装置もあります)
ルーティングによって、中継地点ごとにヘッダ情報から適切な経路を選択して送り出せば、データはほぼ最短距離で宛先に届けられます。
厳密に言えば、ルーティングプロトコルを使って他のルータと経路情報を交換し、パケットを効率よく送る最適なルートを決定しているのですが、もしこうしたルーティングが行われなかったら、例えば、近所の友人にメールを送るのに、パケットが地球の裏側を経由するような事態にもなりかねません。これではネットワークの効率が低下してしまいます。
家庭用のルータも含めた無数のルータが、それぞれパケットの最適な経路を選択して中継し合うのです。こうして様々なルータを介しながら目的地までデータが届くという仕組みになっています。
そして、パケットのヘッダに書き込まれたTTLは、ルーティングを経るごとに値が減少していきます。0になるとパケットがルータによって破棄されます。
ただし、ネットワークを中継する機器はルータだけではありません。
詳しくは次項から学習していきますが、ネットワークには「同じネットワーク」、「異なるネットワーク」、「通信方式(プロトコル)の異なるネットワーク」といった階層が存在します。
同じネットワークとは、会社内や家庭内のLAN同士を接続する場合で、同じIPアドレス体系のネットワークを指します。例えば、1階と2階のLANを接続する場合など、その接続点には同じネットワークを接続するネットワーク機器が必要になります。
異なるネットワークとは、異なるIPアドレス体系のネットワークを指します。例えば、会社内のLANであっても業務用のLANとインターネット用のLANでアドレス体系を分けている場合など、その接続点には異なるネットワークを接続するネットワーク機器が必要になります。
通信方式の異なるネットワークとは、例えばIPv4とIPv6、Wi-FiとBluetoothのように、まったく異なる通信方式のネットワークになります。同様に、その接続点には異なるプロトコルのネットワークを接続するネットワーク機器が必要になります。
ルータはどこに該当するのかというと、
異なるネットワーク同士を中継する機器
になります。
家庭や会社のLANからインターネットへ接続する場合は、異なるネットワークへの接続になります。インターネットは様々なアドレス体系が混在しているため、同じネットワークではありません。したがって、インターネットとLANの中継にはルータが必要になり、ルータがパケットを転送します。
同じネットワーク同士を接続する場合は、HUBやスイッチといった機器が中継し、通信方式の異なるネットワーク同士の接続は、ゲートウェイという機器(ソフトウェアの場合もある)が中継します。
詳しくは次項から学習していきますが、同じネットワークと異なるネットワークでは通信の「階層」が異なるために、中継する機器も変わってくるのです。
また伝送されるデータ単位も名称が変わり、異なるネットワークでは「パケット」でしたが、同じネットワークでは「フレーム」という単位になります。中身の構造もパケットと少し異なり、その階層で伝送できるかたちに変換されることになります。
本項では、まずネットワークには「同じのネットワーク」と「異なるネットワーク」という概念があり、それぞれ異なる通信機器が中継を担当していること、インターネットへの接続は異なるネットワークへの接続となり、異なるネットワークの中継はルータが担当していることをしっかり理解しておきましょう。(通信方式の異なるのネットワークについては現時点で理解しておく必要はありません)
また、ルータはルーティング以外の機能も持つことが一般的です。
パケットを通過させることから、不正なパケットを遮断することも可能になっています。遮断するパケットは設定によって決めることができます。例えば、外国からのパケットは通過させないとか、特定のウェブサイトのパケットのみ通過させるといったルールです。通過するパケットのヘッダ情報を見て、ルータが設定されたルールに従って通過させたり遮断したりしています。
このように、ルータがパケットの通過・遮断を選択的に行うことを、
パケットフィルタリング
と言います。
会社などのLANとインターネットの中継地点では、通常こうしたパケットフィルタリングを行って、外部からの不正なアクセスを防いでいます。
ただこの機能は、総合的なセキュリティ対策の機能の一部でもあり、ルータだけの機能ではありません。また、ポピュラーなセキュリティ技術なので、破る手段も多く、他の技術と併用するのが一般的です。
その他の方式
インターネットでは、パケット交換方式以外にもいくつかの方式が使われています。詳しい説明は割愛しますが、「メッセージ交換方式」、「ブロック転送方式」、「光バーストスイッチング」などがあります。
メッセージ交換方式は、電子メールやメッセージングアプリなどで利用される方式で、メッセージを一括して送信します。メッセージ全体が1つの単位として送信され、途中で分割されたり、再組み立てが行われることはありません。そのため、完全な形でファイルを受け取ることができます。
その仕組みは、中継するノード(主にメールサーバ)がメッセージを一時的に保存し、完全にメッセージを組み立ててから次へ転送します。つまり、中継点ごとに完全な状態になってから送信されるということです。(ノードについて詳しくは、LAN・WANとは を参照してください)
メッセージ交換方式のメリットは、再組み立てが不要なことから完全な状態でデータを受信できること、パケットよりも経路が制限されるため、セキュリティリスクが減ることなどがあります。(逆に経路が多いとそれだけ盗聴などのリスクが高まる)
ブロック転送方式は、データを一定サイズのブロック単位に分けて送信する方式です。具体的には、パケットよりも大きくメッセージよりも小さい一定サイズの単位を定めます。
これはプロトコルの仕様で決まっている場合もあれば、通信時にネットワーク機器が、通信環境などによってサイズを算出する場合もあります。
ブロック転送方式は、メッセージ全体を送るよりも適度に分割することで効率化でき、パケットよりも順番がバラバラにならないといった特徴があります。
光バーストスイッチングは、回線交換方式とパケット交換方式の中間的な仕組みを持つ次世代方式として、研究が進められている方式になります。
中間的な仕組みを簡単に言えば、データの送信前に、専用の制御パケットを使ってインターネット上の経路を確立します。そして、パケットを「バースト」という単位にまとめて、一気に送ってしまうイメージです。
通常のパケットルーティングでは、到達経路は決まっておらず、パケットによって異なる経路を通過する場合もありますが、光バーストスイッチングでは、あらかじめ経路を決めてから通信を開始します。
ただし、回線交換方式のように回線を占有することはありません。光信号によって一気にデータを送信するため、送信時間が非常に短く、回線はすぐに解放されるからです。しかし、まだ研究段階で広く実用化されるまでには至っていません。
このように、実際にはどの方式も、ネットワーク上ではパケットで伝送されており、実質的にパケット交換方式に依存しています。したがって、現在のインターネットは、パケット交換方式で運用されていると言えます。
更新履歴
- 2008年7月27日
- ページを公開。
- 2009年4月30日
- ページをXHTML1.0とCSS2.1で、Web標準化。レイアウト変更。
- 2018年1月26日
- ページをSSL化によりHTTPSに対応。
- 2025年4月4日
- 内容修正。
著者プロフィール
YAMANJO(やまんじょ)
- 経歴
- 岡山県出身、1980年生まれ(申年)の♂です。現在、総合病院で電子カルテなどの情報システム担当SEとして勤務。医療情報学が専門ですが、ネットワーク保守からプリンタの紙詰まり、救急車の運転手までこなしています。
- 医療情報技師、日本DMAT隊員。ITパスポート、シスアドなど、資格もろもろ。
- 趣味は近所の大衆居酒屋で飲むこと、作曲(ボカロP)、ダイビング。
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