演算・制御装置 ~ CPUとは ~
コンピュータの5大装置の中で、2進数の四則演算を行う中枢的な「演算装置」と、各機器を制御する「制御装置」は、じつは同じ装置が兼ねています。
この二役をこなす装置のことを、
CPU(シーピーユー)
と言います。
CPUは、マイクロプロセッサと呼ばれることもあります。人間でいえば「脳」であり、パソコンの頭脳にあたる装置になりますが、簡単に言うと2進数の計算を行う装置です。
パソコンの頭脳であるといっても、これまでの学習のとおり、パソコンはデジタルデータしか扱うことができません。2進数の0と1の2種類の数字を計算することになります。
前項でも少し触れましたが、
CPUは2進数の足し算をしているにすぎない
のです。
ただし、超高速で計算していることは言うまでもありませんので、どのくらいのスピードなのかは後述しますが、2進数の計算では、足し算ができれば四則演算(足し算、引き算、掛け算、割り算)のすべてを行うことができます。
足し算も、1+1=「2」になるのではなく、1繰り上がって「10」となります。こうした計算の処理能力によって、CPUにも性能の優劣が出てきます。
CPUの性能は、以下の単位で表現しています。
Hz(ヘルツ)
「CPUのスペックは何ギガヘルツ」といった言葉を耳にしたことがあるかと思います。(スペックとは製品の「仕様」の意味)
Hz(ヘルツ)は、
1秒間に繰り返される振動数や周波数
を表現する単位になります。
パソコンは、2進数の0と1を電流のONとOFFに対応させているというのは先述のとおりですが、一定の間隔(周期)でONとOFFの電気信号を発生させています。
この電子信号の周期のことを、クロック周波数(クロック) といいます。その周期にあわせて計算が行われるのです。つまり、ここでいう単位Hz(ヘルツ)は、そのクロック周波数の単位のことで、
周波数を高くするにつれて高速で処理をする
ということになります。
したがって、Hz(ヘルツ)という単位の数が大きいほど、高速で計算するCPUであると言えます。
具体的にCPU性能を読み取ってみましょう。
現在のCPUは、クロック周波数以外にも性能を示す指標がいくつか存在しますが、クロック周波数にだけ注目してみると、一昔前にメジャーどころだった(かつての高性能CPUだった)以下のCPUを例に、性能を読み取ってみます。
Intel社製 CPU Pentium4 3GHz
まず、Intel(インテル)社製のCPUであることは容易に理解できます。「Pentium4」はペンティアム フォーと読み、インテル社製CPUのシリーズの名称になります。Pentiumというシリーズのバージョン4の製品であるということです。
そして、次の「3GHz」が性能を表しています。「Hz」の前の「3G」は3ギガのことです。「ギガ」という単位は、デジタルデータの単位 で学習のとおり「10億」を表しています。
Hzは1秒間に何回かを表す単位なので、この例では「1秒間に3G回」ということになります。
つまり、
1秒間に30億回の計算ができるCPU
ということになります。(実際には正確に30億回計算できるわけではありません)
このように、CPUは1秒間に数十億回もの2進数の足し算を行う装置なのです。
簡単に超高速で計算していると解説してきましたが、これほどまでに桁違いのスピードだと思わなかったのではないでしょうか。このスピードで処理できるからこそ、2進数のみで動画や音楽などのあらゆるものが表現できるのです。
ところが、最近のCPUでは、単純に周波数単位が大きいほど高速で高性能というわけではなくなりました。
確かに一昔前のIntel社製「Pentium」シリーズや「Celeron(セレロン)」といったCPUは、周波数が高いほど高性能でした。しかし、Pentiumの後継「Core2(コアツー)」などは、周波数がPentiumのそれより小さくても、高速で高性能になっています。
その理由は、クロック周波数以外の要素にあるからです。
クロック周波数を向上させると熱を放出するため、クロック周波数の向上には限界がありました。もうこれ以上クロック周波数を向上させることができない放熱の限界のところまで開発されてしまったため、方向転換を余儀なくされたのです。
その結果、CPUは2つの集積回路(「コア」という一連の処理装置をまとめたもの)を搭載して、1つのCPUでありながら2個のCPUを搭載している(実際には1つのCPUに2つの「コア」という演算装置がある)かの様に動作するマルチコアがメインになりました。
つまり、マルチコアのCPUであれば、そのコアの数だけ並行して処理をすることができるようになったのです。
以前のクロック周波数の向上のみに努めていたCPUは、シングルコアになります。
したがって、次に性能を示す指標は、
コア数(コアの数)
になります。
下図は、マルチコアCPUの例です。
Intel社製 CPU Core i5-7200U 2.5GHz
「Core i5」とあるのでコアが5つありそうな感じですが、ここを見てもコア数は判断できません。「i5」はコア数を示しているのではなく、製品規格の名称「アイ ファイブ」になります。
Core iシリーズは「i5」の他にも「i3」や「i7」といった製品規格があります。一般的に「i3」→「i5」→「i7」→「i9」と高性能になっています。ただし、コア数は同じ「i5」や「i7」であっても異なる場合があります。車で言うと、車種は同じベンツでもグレードが異なるようなものでしょうか。
このように最近のCPUは、名称を見ただけでは性能を判断できません。購入時には製品の明細で確認できると思いますが、Windowsの機能から現在使用しているCPUのコア数を確認することができます。
「タスクマネージャー」画面の「パフォーマンス」タブを開いてみましょう。(Windowsのタスクバー上で右クリックメニューから開くことができます)この画面でCPUの状態を確認することができます。
また、スタートメニューの「Windows管理者ツール」→「システム情報」画面からも確認することもできます。
上図の場合はコア「2」、論理プロセッサ数(ロジカルプロセッサ)「4」となっています。この部分がコアの数を示しています。
まず、コア「2」なのでコア数は2になります。これだけでシングルコアの2倍の処理能力があります。
そして「論理プロセッサ数」というのがあり、これは「4」となっています。
論理プロセッサとは、実際には存在しないけれど、論理的にあるように動作するコアの数になります。具体的には、1つのコアの中で並列して処理を行うための技術で、1コアあたりの同時に処理が可能な作業数になります。
本来は、1コアあたり1つの処理しかできません。その処理が終わるまでは順番待ちとなります。しかし、1コアでありながら複数の処理を同時に行うことができる技術が論理プロセッサになります。
物理的にあるわけではなく「論理的」に存在する数で、スレッド数とも呼ばれています。この例では、2コア4スレッドとなり、同時に4つの処理を行うことができます。単純計算で、シングルコアCPUの4倍の処理能力になります。
すなわち、
論理プロセッサ数(スレッド数)
もCPUの性能を示す指標になります。
最近のCPUでは、8コアや10コアのものが当たり前になり、どんどんスレッド数が伸びてきています。
また、これらの他にも、CPUに負荷がかかると、自動的に周波数を上げて処理を加速する機能「ターボブースト」などの技術もありますが、専門的になるのでこのあたりに留めます。
話を戻すと、以下の製品について「i5」までは理解することができました。
Intel社製 CPU Core i5-7200U 2.5GHz
残りは「7200U」と「2.5GHz」です。「2.5GHz」については前述のとおり、クロック周波数のことです。1秒間に「25億回」の計算ができる周波数です。
先ほどの「Pentium4」は3GHzで30億回でしたので、劣っているようですが、スレッドが4つあるため処理能力としてはまったく比較になりません。
最後の「7200U」というのは、この製品(Core iシリーズ)の「世代」を表しています。
世代というのは、いつごろ作られた製品なのかという意味で、7000番台なので「第七世代」となり、2017年頃の製品ということがわかります。「U」はモバイル製品という意味です。
世代についても専門的になるのでここまでに留めますが、同じIntel社製でもCore iシリーズから表記が上記のようになっています。世代についても、車の年式や走行距離のようなものと考えればいいかもしれません。
また、Intel社製以外にもAMD社製のCPUがあります。どちらも世界的にシェアを分けており、基本的にCPUはこのどちらかの社の製品になっています。
最後に、CPUの性能を判断できるもうひとつの指標として、何ビットCPUであるのかという見方があります。
これは、一回の計算にどのくらいのビット幅を使うのか、つまり、何ビットを計算単位をしているかという意味になります。
最近の主流のCPUは、64ビットCPUです。これは、
一回の計算において64桁の2進数を扱う
ということです。
長らく32ビットCPUが主流で、64ビットCPUのパソコンは、高度な処理を必要とする業務用やサーバコンピュータなどに限られていましたが、技術の進歩と価格の低下により、2010年頃から一般向けに広く普及してきました。
また、CPUはパソコンだけでなく家電製品やゲーム機にも搭載されており、用途の違うパソコンと単純に比較はできませんが、初期のファミコンは8ビットCPU、スーパーファミコンは16ビットCPUが搭載されていました。
1990年代に発売されたニンテンドウ64というゲーム機は、その名のとおり64ビットCPU、プレイステーション2は、なんと128ビットCPUが搭載されていました。ゲーム機の高性能さと価格の安さに驚きますし、当時の石原東京都知事も絶賛していました。
このほか、CPUの処理性能をあらわす指標として、1クロック(1周波数)でいくつの命令を処理できたかをあらわす「IPC(アイピーシー)」という単位や、1秒間に何百万個の命令を処理できるかをあらわす「MIPS(ミプス)」などもあります。IPCを使うと、IPC×クロック周波数で、1秒間にいくつの命令を処理できるのかがわかります。
以上が、おおまかにCPUの性能を示す指標になります。
これらの指標はCPU単体に限ってのことであり、パソコン全体の性能をあらわすものではないのでご注意ください。 次項以降で学習しますが、パソコンには演算・制御装置であるCPU以外にも重要な装置があります。
さらに言うと、コア数やスレッド数の多い高性能CPUを搭載していたとしても、様々なアプリケーションソフトを同時に使いこなすマルチタスクで、ゴリゴリ酷使するような使い方をしない場合は、無用の長物となることもあります。
当然、高性能なCPUは高額になるので、使用する目的に合ったCPUを搭載したパソコンを選ぶようにしましょう。
更新履歴
- 2008年7月25日
- ページを公開。
- 2009年11月7日
- ページをXHTML1.0とCSS2.1で、Web標準化。レイアウト変更。
- 2018年1月25日
- ページをSSL化によりHTTPSに対応。
- 2022年2月19日
- 内容修正。
参考文献・ウェブサイト
当ページの作成にあたり、以下の文献およびウェブサイトを参考にさせていただきました。
- CPUのビット数
- http://www.infonet.co.jp/ueyama/ip/hardware/cpu_bit.html
- CPUの進化の歴史
- http://asugi23.web.infoseek.co.jp/diyf/diy2b2.htm
- 64ビットCPU
- http://www.nttpc.co.jp/yougo/
- 【CPUの基本】図解でよくわかる「マルチコア / スレッド」の意味
- https://chimolog.co/bto-cpu-core-thread/
- CPU
- https://www.pc-master.jp/jisaku/cpu.html
- 管理人のつぶやき
- Twitterのフォローお願いします!