ウェブページの仕組み(3) ~ ブログとCMS

と昔前まで、ウェブサイトを公開している人の多くは、専用のアプリケーションソフトを利用し、ある程度HTMLやウェブサーバの設定に関する知識を持っている方たちでした。

そのため、簡単にウェブサイトが作成できるとはいっても、頻繁にページを更新したり追加したりするのは、やはり初心者にはハードルが高かったのです。

ところが、2000年代のはじめに、ある画期的なサービスが誕生し、こうした状況が一変しました。

そのサービスが、

ブログ

です。

ブログは多くの方がご存じだと思います。「ウェブログ(Weblog)」の略で、ログ(記録)という言葉どおり、日記形式のウェブサイトを指しています。

1990年代より、個人の日記を公開するサイトが増え始めて、それにともなってウェブログ関連の技術や専用ツールが登場し、2000年頃より一般のブログサービスが提供されるようになると一気に普及しました。そして、ウェブサイトの一形態として一般化し、ブログの筆者は「ブロガー」と呼ばれるようになりました。

従来、ウェブサイトは情報発信が大きな目的で、個人が充実したコンテンツや情報を発信し続けることは困難でした。

しかし、インターネットはこうした一方向の情報発信から、チャットや掲示板等の多方向のコミュニケーションの場としての側面を持ちはじめ、情報交換が活発になってきました。一般の個人でもインターネットで意見表明したり論評したりすることが増えてきたのです。

ブログは日記調のページであるため、普段の日記や思いを簡単に継続的に発信し続けることができます。また、読者がその記事にコメントを入力することができるので、まさにそうした潜在的ニーズを汲み取った技術だったのです。

そして、日記調であるということは日々更新するウェブページとも言えます。誰でも簡単に更新することができなければなりません。ブログはHTMLの知識がまったくなくても、簡単にページを制作することができるようにサービスが展開されています。

2023年現在、ブログの利用者はピークからは減少していると言われていますが、ピーク時の2007年には約900万人が利用していると発表されたほどで、芸能人やスポーツ選手などは必ずと言っていいほどブログを公開していました。現在のTwitterやインスタグラムと同じようなイメージです。

なぜこれほどまでに普及したのかというと、

まったく知識がなくても簡単にページを作成できて更新も容易

である点があげられます。

ページの作成や更新には、専用のアプリケーションソフトを使うのではなく、ブラウザからアクセスしてそのままブラウザ上で作業することができます。

具体的には、ブログサービスを提供している企業のウェブサイトからIDを取得すれば、すぐにでも始めることができます。したがって、インターネットに接続できる環境であればどこからでも更新が可能です。

現在、ブログサービスを提供している企業は減ってきましたが、「アメーバブログ」「FC2ブログ」「ココログ」「livedoor Blog」「gooブログ」など数多くあり、基本的には無料です。

ページのレイアウトやデザインは、多くのひな形が用意されていて、それを選択する程度の作業ですぐに始めることができます。上から順番に「新しい記事」がレイアウトされて表示されるのでとても簡単です。

こうした利点から、ブログは日記形式にとどまらず、時系列で比較的頻繁に更新される情報、例えばニュースや時事評論などを扱うブログもあります。また、グルメガイドであったりメールマガジンのようにトピックを掲載したりと、様々な用途に用いられるようになり、多くのカテゴリーが存在します。

こうしてブログは影響力を拡大し、

ブログが情報発信のツール

になっていきました。

ブログによって情報が広がり、テレビ等のメディアが後からそのトピックを取り上げるという現象や、ブロガーが事件や出来事を生の記事としてブログで独自に発信するといった現象も起こり、ブログが新しい「メディア」として君臨したのです。

また逆に、意識の低いブロガーが、間違った情報や偏見的な意見を掲載することでブログに批判が殺到し、筆者の実生活まで被害を受けたり風評被害を受ける事例もあり、そのブログにアクセスが殺到する「炎上」が頻発するようになります。昨今の動画配信サービスにおける「炎上」のはじまりと言っていいでしょう。

このように、ブログの情報発信によって社会に影響を与えるほど、ブログの影響力が大きなものとなりました。

ここまで普及した要因は、先述の理由に加えてもう一つあります。

それは、

ページを訪れた人とコミュニケーションを取ることができる

という点です。

現代のSNSでは当然の機能なのですが、ブログが登場する以前は、電子メールやチャット、電子掲示板等で不特定多数の人とコミュニケーションを図っていました。

特に電子掲示板は、2ちゃんねるなどの巨大掲示板サイトが存在し、スレッド(トピック)ごとのコミュニケーションサイトとして浸透していましたが、掲示板は何となくディープなイメージを持つ人が多く、また初心者は敬遠されがちなため、ブログが新しいコミュニティの場として浸透していきました。

ブログには電子掲示板的な機能が搭載されており、その日記や記事に対して読者がコメントを書き込んだり、さらにその返事を書くことができます。

また、相手の記事から自分の記事への「逆リンク」を貼ることができる、

トラックバック

と呼ばれる機能により、簡単にリンクのネットワークを構築することができ、相手のブログから自分のブログに訪問者を呼び込むことができます。

これは、営利企業や商売を目的とする個人にとってはとても画期的な機能でした。インターネットビジネスにおいては、いかに自社のウェブサイトに訪問者を増やすかというアクセス数の向上が至上命題だからです。

そこで、アクセスアップを図るために他のサイトから自社のサイトにリンクを貼ってもらいますが、通常はサイトの運営者にメール等で「リンクをしてください」とお願いをしてリンクを貼ってもらわなければなりません。

その点、トラックバックは、簡単な操作で自動的にリンクを貼ることができます。もちろん、トラックバックを受けるかどうかを設定したり、キーワードを設定してスパムを防止することができます。

また、多くのウェブサイトとリンクによって結ばれるというのは、Yahoo! やGoogleなどの検索エンジンで「上位表示」されるSEOと呼ばれる対策にも効果的でした。

そのためブログは、HTMLの知識がなくても簡単にページを制作して管理することができ、さらにコミュニケーションやアクセスアップの機能も充実している便利なウェブサイトとして普及していきました。

そして、ビジネスとしてもブログの活用法が模索されてきました。

例えば、ブログを「口コミ」のマーケティングツールとして商品の販促に活用したり、商品の批評や宣伝をブロガーに行ってもらうことで、より親近感のある意見、体験談として消費者に訴えかけるといった方法です。

これは、ステマ(ステルスマーケティング)として近年でも話題となるように、また新たな問題を引き起こしていきます。この流れは、TwitterやYoutube、インスタグラム、TikTokなど現代のSNSへと引き継がれていくことになります。

このように、ブログの登場によって一方向発信だったインターネットサービスが大きく変わっていきました。

しかし、多くの企業ではブログをもっと有効活用したいと思っていましたが、一般的なブログはレイアウトが画一的で、新しい情報(記事)が一番最初に表示される時系列管理など、企業のサイトとして使うには不向きな面もありました。

すべて時系列で表示されてしまうと、商品ラインナップや会社概要、採用情報等のニュース以外の即効性がない情報をうまく管理できないということです。

こうした背景から、ブログのように知識なしでページを更新できうして、なおかつ、ビジネスにおけるページの自由度や融通、機能を備えたシステムが登場しました。

それが、

CMS(シー エム エス)

と呼ばれるシステムです。

CMSは「Contents Management System」の略になります。CMSはブログより自由度が高いのが特徴で、

ページ単位のデザイン変更が可能で時系列以外の管理も可能

になります。

CMSは無償のものから有料なものまで幅広くありますが、CMSの導入によって、企業にとっては個々のページの更新作業やレイアウト、リンク設定といった煩雑な作業から解放され、誰でも更新できて、また複数人が利用しても統一的なレイアウトでページ制作のガイドラインも守られるというメリットがあります。

CMSはよくブログと比較され、その違いを議論されることもありますが、基本的にCMSはウェブサイト全体としてのコンテンツを管理するための仕組みであり、機能の一部として「ブログ機能」を持っているという違いになります。

HTMLとは で学習した「WordPress」というウェブページ作成用ソフトはCMSの一つになります。

世界中のサイトのおよそ4分の1はWordPressで構築されていると言われているモンスターソフトで、現在では多くのブログもWordPressを利用して作成されています。

従来のブログは、先述したブログサービスを提供している企業のサイトに登録して、その企業のサーバとアドレスを無料で提供してもらうイメージでした。そのため、利用しているブログがどこのサービスであるのかは一目瞭然でした。

一方、WordPressは無料のソフトウェアですが、自分のPCにインストールするのではなく、契約しているウェブサーバにインストールして利用します。そのため、ブラウザから操作することができます。

レンタルサーバを契約する料金が発生しますが、自由度が高く、独自ドメインを利用することができます。(ドメインについて詳しくは、クラスとドメイン を参照してください)

また、WordPressはテンプレート数も膨大で細かい設定が可能となっており、無料のブログサービスによくある制限(容量制限、HTMLCSSの編集制限など)を受けないため、広く利用されています。

更新履歴

2009年6月21日
ページを公開。
2009年6月21日
ページをXHTML1.0とCSS2.1で、Web標準化。レイアウト変更。
2018年2月1日
ページをSSL化によりHTTPSに対応。
2023年7月31日
内容修正。

参考文献・ウェブサイト

当ページの作成にあたり、以下の文献およびウェブサイトを参考にさせていただきました。

HTMLを知らない人でもWebサイトが作れるCMSとは?
http://www.atmarkit.co.jp/fwcr/rensai/freeauthoring07/freeauthoring07_1.html
CMSとWordPressの違いとは?歴史や種類についても解説
https://www.onamae.com/column/wordpress/13/