文章の保護 ~ 編集を制限する ~

成したWordドキュメントを他の人に編集されたくない、読み取り専用にしたい、または、一部だけ編集を許可したいといった場合があるものです。

例えば、不特定多数の人がそれを利用する場合、ユーザーによってスキルがまちまちなので、書式やレイアウトが変更されてしまったりして、本来意図した使い方ができないといった経験がある方も多いと思います。

そこで本項では、Wordドキュメントの編集制限について学習していきたいと思います。

さて、ひと口に編集制限といっても、まったく編集できないように完全保護(読み取り専用)する場合と、一部のみ編集を許可する場合があります。

Wordではどちらも簡単に設定することができますが、まずは、Wordドキュメントを開いて、「校閲」タブを選択し、「保護」グループにある「編集の制限」ボタンをクリックしましょう。

「校閲」タブの「編集の制限」ボタンのイメージ

すると、「書式設定と編集の制限」ウィンドウが画面右に表示されます。このウィンドウで編集の制限の詳細を設定していきます。

「書式設定と編集の制限」ウィンドウのイメージ

一方、「編集の制限」ボタンの隣りの「編集のブロック」ボタンは、通常グレー反転していて使うことができません。このボタンは、 Windows Live OneDrive などのクラウドサービス(インターネット上で共有できるディスクスペースやストレージ)を利用している場合にのみ利用できるようなので、今回は使用しません。

また、同ボタンは「開発」タブの中にもあります。「開発」タブが表示されていない場合は、ドロップダウンリストの作成 を参照して表示させてみてください。

さて、では「書式設定と編集の制限」ウィンドウで編集の制限を行ってみましょう。

まず、上から「1.書式の制限」の項目については、文字どおり「書式」の使用を制限することができます。ここにチェックを付けて、「設定...」のテキストをクリックすると、「書式の制限」画面が表示されます。

「書式の制限」画面のイメージ

この画面で様々な書式の使用について制限をかけることができます。利用を許可するスタイルにチェックを入れます。つまり、チェックが外されたスタイルは使用不可となります。

ただし、注意が必要なのは、「スタイル」とあるように、

ここで許可される書式はスタイルに登録されている書式のみ

になります。(スタイルについて詳しくは、表示モード を参照してください)したがって、書式の制限をかけると、下図のように一律に「ホーム」タブのフォントや段落グループのコマンドボタンが使用できなくなります。

「ホーム」タブのイメージ

ここでは、「強調斜体」と「強調太字」のみを許可してみましょう。

「書式の制限」画面のイメージ

これで「OK」ボタンをクリックすると、チェックした2つの書式のみ設定することが許可されますが、ドキュメントによっては、下図のメッセージが表示されます。

Wordの注意メッセージのイメージ

これは、作成しているWordドキュメントに許可されていない書式(「強調斜体」と「強調太字」以外の書式)が使われているためです。「はい」を選択すると書式がクリアされてしまいます。通常は「いいえ」を選択します。

すると、「書式の制限」画面が消えますが、これだけでは制限が適用になっていません。「書式設定と編集の制限」ウィンドウの「はい、保護を開始します」ボタンをクリックすると適用になります。

「書式の制限」画面のイメージ

同ボタンをクリックすると、さらに「保護の開始」画面が表示され、パスワードの設定をすることができます。これは制限を解除するときにパスワードを求めるかどうかの画面になります。

「保護の開始」画面のイメージ

パスワードをかけたい場合は、任意のパスワードを入力し、パスワードが必要ない場合は空白のまま「OK」ボタンをクリックします。これで制限が適用になります。

すると、先述のとおり「ホーム」タブのツールボタンはグレー反転されて使用不可となりますが、許可されたスタイルだけは、クイックスタイルギャラリーに表示され、使用することができます。

クイックスタイルギャラリーのイメージ

この2種類の書式だけは使用することができますが、スタイルを解除する場合にはツールのボタンが使えないので、下図のように、クイックスタイルギャラリーより、「書式のクリア」を選択して解除します。

クイックスタイルギャラリーのリストのイメージ

では次に、「編集の制限」項目についてです。

「2.編集の制限」部分の「ユーザーに許可する編集の種類を指定する」にチェックを入れると、下図のようにリストメニューを選択できるようになります。

「書式設定と編集の制限」ウィンドウのイメージ

また、「例外処理(オプション)」項目が表示され、説明文にあるように、例外的に編集を許可するユーザーを指定することができるようになります。

「書式設定と編集の制限」ウィンドウのイメージ

まずは、「ユーザーに許可する編集の種類を指定する」のリストより、「変更履歴」を選択してみましょう。

変更履歴とは、変更履歴の記録とコメントの挿入 で学習のとおり、ドキュメントを変更した履歴を表示する機能のことです。(詳しくは、同項を参照してください)

「書式設定と編集の制限」ウィンドウのイメージ

この場合は、他に設定するところがないので、そのまま「はい、保護を開始します」ボタンをクリックします。同様にパスワードの設定画面も「OK」ボタンで閉じます。

文字の追加や削除等を行ってみましょう。すると、下図のように、以降すべての加筆・修正等に関しての変更履歴が記録されていきます。

変更履歴が記録されているイメージ

この場合は、「ホーム」タブのコマンドボタンもすべて使用することができます。用途としては、まさに変更履歴を残すために使われ、不特定多数のユーザーが編集するドキュメントであっても、加筆・修正の履歴を正確に残すことができます。

次に、「コメント」を選択して、保護を適用してみましょう。

コメントというのは、変更履歴の記録とコメントの挿入 で学習した欄外の注釈コメントのことです。この場合は、コメントだけが編集できなくなると思われがちですが、まったく逆で、

コメントしか編集することができない

というモードになります。コメントの追加・削除・修正しかできません。したがって、コメント以外の本文はまったく編集することがでないので、かなり編集は制限されるので注意が必要です。

「編集履歴」と「コメント」のイメージ

ただし、「コメント」を選択した場合は、「例外処理(オプション)」項目が表示され、例外的に編集可能にする部分やユーザーを指定することができます。

「書式設定と編集の制限」ウィンドウのイメージ

上図の説明文にあるように、範囲指定した部分の編集を許可することができます。許可したい部分があれば、任意の部分を範囲指定します。

その状態で、次はその部分の編集を許可するユーザーを選択します。ただし、ユーザーについては通常「すべてのユーザー」しか表示されないので、「すべてのユーザー」にチェックを入れましょう。

そして、「はい、保護を開始します」ボタンをクリックし、パスワードの設定画面も「OK」ボタンで閉じます。すると、範囲指定した部分には、下図のように「カッコ」の記号が付き、薄い黄色に着色されます。

例外として編集が許可された記号のイメージ

このカッコの範囲が編集可能な領域になります。例外オプションを指定した場合は、その例外部分とコメントのみが編集可能になります。

また、この記号については、表示させなくすることも可能です。保護を適用すると、「書式設定と編集の制限」ウィンドウは、下図のように「権限」項目に変化します。「編集可能な領域を強調表示する」のチェックを外すと、強調表示のカッコが表示されなくなります。

「書式設定と編集の制限」ウィンドウのイメージ

では次に、「フォームへの入力」を選択して、保護を適用してみましょう。

フォームとは、ドロップダウンリストの作成 で学習した、ドロップダウンリストなどのコンテンツコントロール機能のことです。(詳しくは、同項を参照してください)この場合も、コンテンツフィールドだけが編集可能になります。

「書式設定と編集の制限」ウィンドウのイメージ

「フォームへの入力」を選択した場合は、「例外処理(オプション)」項目は表示されません。以降は同様に、「はい、保護を開始します」ボタンをクリックして保護を適用させます。

すると、コンテンツコントロール以外はまったく触れなくなります。

コンテンツコントロールのサンプル文書のイメージ

以下のサンプルで実験してみてください。(ファイル形式は「.docx」になります。ファイル形式について詳しくは、ワード(Word)の起動と終了と保存 を参照してください)

上記送付状などのように、テンプレートとして利用する場合に有効な機能になります。

ただし、注意が必要なのは、編集を制限した場合はコンテンツコントロールのタイトルタブが表示されなくなることです。通常であれば、下図のように、フィールドを選択した状態で「タイトル」が表示されます。

コンテンツコントロールの「タイトル」のイメージ

しかし、編集の制限をかけると、下図のようにタイトルは表示されなくなります。

コンテンツコントロールを選択したイメージ

ただこれだけなので、理由はわかりませんが、それほど気にする必要はないかもしれません。

では、最後に「変更不可(読み取り専用)」を選択して、保護を適用してみましょう。これは文字どおり、全体が編集不可となり、見るだけしかできない状態になります。

「書式設定と編集の制限」ウィンドウのイメージ

ま「変更不可(読み取り専用)」を選択した場合は、「コメント」と同様、「例外処理(オプション)」項目が表示され、例外的に編集可能にする部分やユーザーを指定することができます。操作方法はまったく同じです。

以上で、編集に制限をかける方法は終了です。逆に、保護を解除する場合は、同ウィンドウの画面下の「保護の中止」ボタンをクリックすると保護を解除することができます。

「書式設定と編集の制限」ウィンドウのイメージ

パスワードを設定している場合は、「文書保護の解除」ウィンドウが表示されます。設定したパスワードを入力すると保護を解除することができます。

「文書保護の解除」ウィンドウのイメージ

では、最後に補足事項です。

このように、編集の制限をかけると、完璧に保護してくれると思いがちですが、じつはそうではありません。例えば、「変更不可(読み取り専用)」に設定しても、できてしまう操作があるのです。それは、

画像やテキストボックス、図形などのオブジェクトのコピー

です。したがって、オブジェクトがコピーされて利用される可能性があることを知っておきましょう。つまり、完璧に保護されるわけではなく、セキュリティ的にはいくつか抜け道があるようです。

そのため、機密性の高いドキュメントの保護には向いていません。複数のユーザーによる操作で、簡単に書式が書き換えられないようにするための機能として認識しておくのが良いでしょう。

更新履歴

2015年9月7日
ページを公開。
2018年1月18日
ページをSSL化によりHTTPSに対応。

参考文献・ウェブサイト

当ページの作成にあたり、以下の文献およびウェブサイトを参考にさせていただきました。

文献
なし
サイト
なし